暇人日記

毎日が暇です。

復讐者に憐れみを

残酷シーンばかりが出てくるが、普通の人たちの物語。

シン・ハギュンは姉のために自分の腎臓を提供しようとする。どう見ても危険人物には見えない。頭髪の緑色から青信号を想像してしまうくらいだ。
ペ・ドゥナは誘拐事件をそそのかすが、危害を加えるつもりはまったくない。反新自由主義の活動を行っていても、その組織が自分ひとりだけというのは笑ってしまう。
このふたりは上に登ろうとする。シン・ハギュンは腎臓を売るために階段を上ったし、ペ・ドゥナは誘拐事件を起こし階下から明るい出口をあおぎみる。

一方、ソン・ガンホは誘拐事件で階下に引きづり落ろされる立場だ。それもエスカレーターで降りてくる。彼もとくに悪人というわけではない。従業員の解雇にはやむにやまれぬ事情があるし、娘を大事に思うのは純粋な親の気持ちだ。

新自由主義のもとでは、声を上げることができない弱者、がむしゃらに勝利を目指す強者、それにそのような体制に反抗するものの3者がそれぞれの立場を生きているわけだ。

もともと彼らは赤い血が流れる生きている人たち。それも一輪挿しのように静かに。それなのに懸命に生きようとすると悲惨な状況が次々に生まれてしまう。

ラストシーンは不気味だ。ひとりだけの組織がいつのまにか増えている。そのメンバーはもう普通の人たちではなく、たばこを吸うように人を殺す。

これほど凄惨なシーンを盛り込まなければ、もっと興行成績があがったかもしれない。しかし、現実を見ないわけにはいかないという強いメッセージが感じられる。